妄想旅人、南雲です。毎月「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージでドライブをしていく妄想シリーズを展開しております。
今回は、成人式を迎えるために地元新潟に帰ってきた二十歳の男子と幼馴染の同級生男子2人ドライブの話。
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成人式で三連休に帰ってきた友人は、大学が休みでバイトもなくしばらく東京へは帰らないという。
久しぶりに会って話が弾み、どこかへ出かけたいよねとドライブにでかけることにした。
関越自動車道方面へ。
高速に乗る前に、ウインターパスを申し込んでおくと料金が割引になってお得なのでスマホで申し込みを完了して、いよいよ出発。

友人「お前の運転で高速乗るの、初めてだわ。飛ばすなよ。」
僕「安全運転がモットーだから、大丈夫だよ。」
僕「いい天気で良かった。ドライブも楽しいよ。」
友人「今日、どこに行くんだっけ。」
僕「十日町。」
友人「あ~、大地の芸術祭のところだよね。まわりすっごく行ってたわ。インスタも凄くて。あれ?まだやってるの?」
僕「あ、いやいや。今日は松之山温泉のむこなげ・すみ塗りっていうイベントがあるんだよね。村の娘を取っていったな~っていって婿を雪山の崖の上から投げるみたいだよ。それ、見てみたくて。」
友人「うわ~、まじか。すごい祭りだ。」
友人がスマホで検索しながら、
友人「あれ、でもさ。これ14時~16時って書いてあるよ。まだ早いじゃん。お昼でも食べる?」
十日町で名物へぎそばでも食べようかと、車をとめてふたりで検索を始める。
僕「あ!!!」
友人「え?何?」
僕「チンコロ市、今日だ。」
友人「え?何なに? チン・・コ・ロ?」
僕「チンコロ買うなら午前中って書いてある。まだ間に合うぞ、もう少し近くまで行ってみよう。」
※チンコロとは、米粉を原料につくった縁起物で小さくて可愛い犬を意味する。1月の10日・15日・20日・25日の4回開かれる節季市(通称ちんころ市)で販売される。
僕は少し興奮気味に、チンコロ市が開催されているであろう十日町市の諏訪町を目指す。その間、友人はチンコロ?チンコロ?と言いながら検索し、「この白い犬みたいなのをチンコロって言うんだ~。」とひとりで納得していた。
検索したサイトには十日町駅から徒歩10分と書いてあったのでまずは現地を確認してから十日町駅に車を停めようとチンコロ市が行われている諏訪町通りを通り過ぎて近くの駐車場へと停める。

通りには野菜や魚を売るお店やお祭り屋台、七味とうがらし・新潟名物ぽっぽ焼き・たい焼き・お好み焼き・豚足・繭玉で作られた人形のお店が12~13軒ほど立ち並んでいた。節季市の始まりは雪に閉ざされた豪雪地域の農家が、冬の仕事として竹細工やわら細工を作って販売していたもので江戸時代から続く市なのだそう。
お、あったあった。チンコロ。
平日なので通りに混雑はなかったものの、チンコロを販売しているようなお店の前には人だかりができている。
覗いてみようとしたがなかなか見えないので他のお店を探してみる。
チンコロと書かれた看板のお店をのぞいてみると、空の箱が山積みされており、完売感を醸し出している。
「残りひとつです。いかがですか?」というお店の人の声がするので近づいてみると、割りばしに刺さった白い餅で作られたとりのような形のものが一つだけ、箱に残されていた。イメージしていたチンコロと違うがとりあえず残り一つなので買ってみる。
僕「あ、それください。」
お店のひと「300円です。ありがとうございます。」

飾っておくチンコロではなくこちらは食べられるチンコロ、「とっとこ」らしい。
柔らかいもちに、こしあんが入っている。ひとつだけだったのでビニールをはずし、刺さっていた串をナイフのかわりに鶏を半分に切った。
僕「頭としっぽ、どっちがいい?」
友人「どっちでもいいよ。」
と言いながら、彼は頭を持って行った。きっと銘菓ひよこもたい焼きも頭から食べるタイプに違いない。
そうこうしているうちに、さっきの人だかりがはけ、チンコロ屋さんが「いや~、さっきは忙しかったね。棚に出したのみんな売れちゃって。」と話をしているのが聞こえた。
値札には、座布団付き1000円とあり、ネットで検索していたチンコロ300円とは少し違うことに気が付く。

お店の人「普通のは、割れちゃうでしょ。これは割れないように粘土の樹脂で作ってあるの。
それからこれはストラップ。チンコロは犬なんだけれど、干支も作るから今年のは猪・・・子どもだからウリ坊だね。」
僕「米粉のチンコロを売っているお店はないんですか?ネットには午前中と書いてあったんですが。」
お店の人「市が始まって1時間か1時間半で売り切れちゃうんだよ。今日は2~3軒お店が出ていたけれどもうみんな店じまいしたね。」
チンコロ買うには午前中じゃなくて朝一で並ばなくちゃならないんだな。でも、せっかく来たので、ストラップを買って帰ろう。
友人「これ、昔、お前んちで飼ってたシロに似てるな。」
僕「あ、ほんとだ。みんな微妙に顔が違う。これが似てるな、うん、これにする。すみませ~ん、これください。」
買いたかった米粉で作った割れる(細かく割れれば割れるほど良いらしい)チンコロは買えなかったけれど、昔買っていたシロによくにた可愛らしい子犬のストラップを買い機嫌よく駐車場へ向かう。外を歩いて少し体が冷えたので、ヒーターをMaxにしながら、ここから近い日帰り温泉を検索。
友人「あった!千手温泉千年の湯。」

友人「足湯もある。これから婿投げ・すみ塗を見に行って顔が真っ黒になるから温泉はまた後にしようか。
とりあえず足湯に入ろう。最近、どこに行っても足湯があって便利だよね。」
僕「女子は、冬はタイツ脱ぐのがめんどくさいから足湯はちょっとね…とか言って入らないけれど、男同士だと気兼ねしないで入れるし、ね。」
源泉かけながしの贅沢な足湯。泉質は、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(弱アルカリ性低張性高温泉)ん~温まる。
足湯からあがると、ちょうどいいタイミングでお昼になったので、近くのお蕎麦屋さんへ向かうことに。
もちろん、片時もスマホを手放さない友人が足湯に入りながらずっと検索していた小針や亀田にも店舗がある人気店、小嶋屋総本店の本店へと車を走らせる。
僕「へぎそばの名店だけど、ご飯とセットのものや季節ものもあっていいよね。蟹わっぱ飯、なべ焼きうどん、う~ん悩む。」
友人「俺、これにする。季節の天ばら膳だって。旨そう。」

僕「黄色いホイップクリームみたいな、これ、からし?」
すかさず小嶋屋総本店のHPを見ながら
友人「この地方ではわさびが取れなくて、あと海藻のつなぎでつくったそばにからしの風味がよく合うからなんだって。」と教えてくれた。

からしをつけて食べてみる。天ばら膳は3回楽しみ方があるのだそうで、最後の天茶用にわさびもついていたので、わさびと食べ比べてみる。
からしをそばつゆにつけずにそばに載せて食べてみた。あまりつんと来なくてそばを包んでいるようで美味しい。
その後、わさび。やっぱり食べなれているからわさびかな。 両方美味しかったけれど。
でも、ものすごい量だと思いながら、そのまま食べたり卵の天ぷらを割って黄身のとろ~りとした部分と一緒に食べたり、
天茶にして食べたりしているうちにかき揚げ丼も完食。 ご馳走様でした。

会計のときに感謝券をいただいた(500円割引券)。
さて、13時を過ぎたし松之山に向かうぞ。というところで友人のスマホが鳴る。
友人の耳元から女性の声が聞こえる「あんた、いまどこにいるのよ。今日でかけるって言ってたじゃん。」
聞き覚えのあるあの声は、彼のお姉ちゃんだ。3学年上の彼のおねえちゃんはちょっと怖い。
友人「あ、そうだった。忘れてた。今から帰るから、夕ご飯には間に合うよ。」
電話を切った友人が「ごめん、俺忘れてたわ。今日の夜家族で出かけるって話していたんだ。
せっかくの婿投げだけど今日帰らないと。」
僕「うん、わかった。祭りはずっと続くだろうし、また行こうよ。っていうかそのうちお前が松之山の人、嫁にもらって雪山から崖下に投げられたりしてな。」
友人「そうだな、そしたらお前の顔をまっくろに炭で塗りつぶしてやるよ。」
冗談を言いながら帰る道も楽しかった。成人式であいつがどう変わっていた。だの、ついつい調子にのって2次会では飲みすぎたよな、だの、大好きだった古典の鈴木先生が結婚しちゃってびっくりしたわ、だの、たわいもない話で時間があっという間に過ぎていった。
男同士のこんな旅もいいな。
僕「また、帰ってきたらどっか行こうよ。」
友人「次は・・・春休みか、GW!」

家に連れて帰ってきたチンコロを眺めてみた。
チンコロ屋のおじさんに教えてもらった、毬を持っているのも持っていないのも犬かと思ったら違うらしい。
左は毬で遊ぶ猫、中央は干支の猪(子どものうり坊)、右は子犬。
お母さんに見せたら、「うわ~、この子、シロに似てるわね。可愛い。」と喜んでいたので思わず「お母さんにお土産だよ」とことばがでた。僕も大人になったな。
ウリ坊・・・友達のお姉ちゃんにあげればよかった。「やば~い、今年年女だよ~。」とか叫んでいたし。
ほんと、あのお姉ちゃんはいつも“猪突猛進”だよな。でも、これあげたらあいつ怒られないで済んだかも。
遠いと思っていた場所へも車や高速道路があれば、案外すぐ行ける。遠いと思っていたのは、気持ちだけなのかもしれないな。今度また誰か誘ってドライブしてみようっと。 あ、遊ぶためにあとバイトもしなくちゃ。