妄想旅人、南雲です。妄想?というと不思議に思うかもしれません。旅は誰とどんな想いで行くか?によって旅先や行程、選ぶ店、過ごし方がずいぶんと変わってきます。ニイガタドライブでは、毎月テーマを決め、「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージでドライブをしていく妄想シリーズを展開しております。
それでは、妄想ドライブ旅、スタートです。今回の旅人はこちら。
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旅人:新潟在住 女性(34歳)両親、妹と同居
この秋に結婚が決まった20代の妹と一緒に、独身時代最後の姉妹二人旅。あ、わたくしは30代半ばにさしかかった・・・独身です。せっかくだから思い出に残る旅がしたいと『巫女体験』ができるという縁結びの神さま、山形県赤湯温泉にほど近い“熊野大社”へ。 妹の縁はもう結ばれているので、幸せを分けてほしいという願いも込めて。いや、もう、私が縁結びの神様に神頼みに行きたいだけだったりするのだけれど。
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【ドライブ1週間前】
ふたりで旅をする前に、ひとりでいっておきたい場所がありまして。その名も「宝珠山 立石寺」。通称、山寺。悪縁を断つ縁切寺としても知られているパワースポット。さすがにこの縁切りスポットに、秋に結婚が決まった妹を誘うわけにもいかず、ひとりひっそり訪れてみようと決意してやってきた次第。 そもそも、どうやら私には男運というものがないらしい。
しっかりしてそうに見えるのか、いつもいつも男に頼られ・・・結果、はいそうです。ダメンズと呼ばれる方々としかお付き合いしたことがありません。 働かない・賭け事が好き・なかには・・・あ~思い出したくもない! しかし、私も30半ばに差し掛かり、20代の妹は結婚するし、結婚したいのよ。幸せになりたいのよ。だからまず、今までの悪縁を切らなくては!!! ということで巫女体験の前にしっかりと悪縁払いをすることにしたのであります。

しかし、神様も仏様もそんなに簡単に悪い縁を切らせてはくれません。立石寺、噂には聞いておりましたが階段が多い。聞けば、1015段。ひとつひとつの階段を踏みしめて上に行く毎に煩悩が打ち消され修行できるのだとかで108つでは足りない煩悩だらけの私にはちょうど良い長さなのかもしれないと思いつつ、確実に重くなる足を精一杯引きあげながら一歩一歩、歩いてゆく。
とぎれとぎれに発するハァハァという呼吸のかすかな音だけが澄んだ空気に溶け込んでいく。ふと視線をあげると “せみ塚”という看板があり、そこには“松尾芭蕉”が奥の細道のなかで記した“閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声”というあの名句が、この地で詠まれたという事を知る。
一呼吸置いた後、また煩悩をひとつひとつ浄化しながら参道を上り、目指すは華蔵院。悪縁切りや悪い運気を祓うパワースポットとして知られているところで、華蔵院についた時には額からも全身からも汗が流れ、精神的にも肉体的にもなんだかすっきりしたような気がした。あとは必死に悪縁切りのお祈りをし、帰路へ。

立石寺
所在地:山形県山形市山寺4456-1
電話:023-695-2843
営業時間:8:00~17:00(閉門)
拝観料:大人300円
さて、ここからが本題。今回は、やまがたアルカディア観光局が企画した“巫女体験”のプランを予約。朝8時に南陽市にある熊野大社集合のため、妹と二人で前の晩から近くの赤湯温泉へ宿泊。
山寺で悪縁を断ち切ったし更にすっきりするぞ。と意気込み迎えた巫女体験当日。

駐車場でもたもたしているうちに妹はさっさと準備をして「お姉ちゃん、早くぅ。遅れちゃうよ。」と手招きをする。大切な行事に遅れるわけにはいかない。「ちょっと待ってよ。」と言いながら集合場所にいく為に階段を上る。また階段。ハァハァ・・・。神様に近い場所はどうやら平地にはないらしい。
集合場所には私たちのほかに2人の女性がいた。神社の方による説明を受けてから巫女衣装に着替えるため祈祷殿の和室へ案内される。巫女衣装、なかなか着ることはないので神聖な気持ちの中にもワクワクした楽しさがあり朱色の袴を広げたり着付け道具を触ったりしていると、先に着替えを始めた妹は神妙な面持ちで鏡を見つめている。

あ、私もヘラヘラしている場合ではない。しっかりと心を静めないと。
サラサラなストレートヘアを一つに結び、身支度を整えた妹はすっかり巫女さんになっていた。そして私はというと、どう見ても巫女というより女剣士のようだった。ま、しょうがないね。ずっと剣道やっていたし。ある意味、似合ってるってもんだ。と自分を慰めてみる。

最初に朝拝という、通常職員のみで行う朝のお参りに参加させてもらった。神主さんや巫女さんから神様へのお供え物など一連の動きを学ぶ。それからお祓いも。高ぶっていた気持ちも落ち着き、深呼吸によって身体に神聖な空気が取り込まれているような気がしてきた。
その後、境内清掃へと進む。

断捨離という言葉も流行ったが、周りをキレイにすることで自分の中のいらないものを整理したり、もやもやを一掃できそうな気分になり、境内を一生懸命掃き清めてみた。その後、宮司さんから古事記についての講和を聞いた。
ここ、熊野大社が縁結びの神様として信仰を集めるには所以があり、熊野大社の神様であるいざなぎのみことといざなみのみことは一番最初に結ばれた男女の神様だそうで、ふたりのプロポーズのことば「あなにやし、えをとめを(ああ、なんと素晴らしい女性だろう)」「あなにやし、えをとこを(ああ、なんと素晴らしい男性だろう)」が残されているのだそう。心から素敵な男性と巡りあえた いざなみのみこと にあやかりたいと思った。日常とかけ離れたゆったりとした時間のなかで神話を想い自分の心と向き合う時間が過ぎてゆく。

授与所に場所を移して、巫女さんのお仕事であるお守りづくりも体験。お守りには、自分の願いをしっかり書いた。これに祈祷してもらい持ち帰れるのだ。想いをしっかり封じ込めた。
しっかりと身を清め、心も境内も掃き清め、神に祈った巫女体験。清々しい気持ちにあふれた。
と、少しカッコつけたところでお腹が鳴った。身体は正直だ。このプランは、体験後のランチもついているため事前に選んでおいたicho cafeの縁結びランチを頂くことにした。
南陽市宮内の酒蔵“東の麓”の酒かすを使った麓の芳醇パスタ カルボナーラ。健康や美容に効果があるといわれる酒粕を使った料理で身体の中からもキレイになりたいという願いを込めて。

巫女体験プランの問い合わせ先
やまがたアルカディア観光局
所在地:山形県長井市東町2番50号
TEL:0238-88-1831 FAX:0238-88-1812
URL http://kankou-nagai.jp/
帰り道は妹が運転した。
そして「お姉ちゃん、ごめんね。」とつぶやいた。両親を私に任せ、先に嫁ぐのが申し訳ないと思っていたようだ。年が離れているせいか、いつまでも子どもだと思っていた妹がちょっぴり大人びて見えた。「来るときもさ、ずっと運転してくれて疲れたでしょ。帰りは寝ていていいよ。」とこっちを気遣う。なんだか少し照れくさくなり小さな車の中というふたりだけの空間で長い時間おしゃべりしながら姉妹の濃い時間を過ごした。
「たまにはさ、こうして遠出するのもいいね」と私が言うと、「ちょくちょく里帰りするからまたドライブ行こうよ」と妹が笑った。