妄想旅人、南雲です。妄想?というと不思議に思うかもしれません。旅は誰とどんな想いで行くか?によって旅先や行程、選ぶ店、過ごし方がずいぶんと変わってきます。ニイガタドライブでは、毎月テーマを決め、「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージでドライブをしていく妄想シリーズを展開しております。
それでは、妄想ドライブ旅、スタートです。今回の旅人はこちら。
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旅人:群馬在住、35歳、女性。出身、佐渡(新穂)。実家で用事ができ帰省することになった。ご飯だけ食べに出ようと母と飲食店に向かったはずだが、急に誘われてドライブをすることになった。
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今回は、3日間の休みを取り実家のある佐渡へ帰省。数年に1度、しかもお盆位しか戻ってこないので秋にくるのは何年ぶりだろう。船を降りると実家に行く前に少し寄り道をしたくなって、景色の良い白雲台へ向かうことにした。
『佐渡って島だから高い山もなくて紅葉とかあまり綺麗じゃないでしょう。』と同僚に言われたが大佐渡スカイラインの紅葉が結構好きなのだ。他にも、紅葉山というどうみても紅葉が美しそうな紅葉名所もある。山は色づいているのだろうか。
白雲台の大きな駐車場には売店があり、佐渡の特産品が所狭しと並べられていた。島黒豚カレー・生乳ソフトクリームなどその場で食べられる美味しそうなメニューもある。そういえば、佐渡にくる船の中でもカレー・スパイス料理研究家の「一条もんこ」さんが監修したという佐渡汽船カレーのポスターが張られていた。カレーマイスター・カレー伝道師だそうで「新潟をカレー県に」と活動されているのだそうだ。
これとは別だが思いめぐらせてみると、佐渡島内でもカレーを出すお店が多いような気がしてきた。超大盛が有名なカレー、東京の名店で修行したシェフのカレーなどなど。
スパーシーな香りに誘われて思わずカレーを注文したくなったが、お昼は家族と食べようと思っていたので、店内をぐるり見渡してから外へ出た。

展望台からは船が着岸した両津、実家のある新穂を含む国中平野、反対側の佐和田や真野、そして小佐渡が良く見えた。新潟県最大の湖というだけあって加茂湖も大きいな、と改めて感じる。
加茂湖を見ていたら急に名産の牡蠣が食べたくなってきた。もう、お昼過ぎているし、そりゃお腹もすくわよね。
しかし、残念ながらまだ牡蠣の季節ではない。最近、美味しい海の幸食べてないからみんなを誘ってお寿司食べに行こう、と思い立ちスカイラインを下山し実家のある新穂へ向かう。
交流センター白雲台
新潟県佐渡市中興乙3534-158
0259-61-1172
9:00~17:00
「ただいま~。お腹空いちゃった。ご飯食べに行こうよ。」というと、母が「あなた、連絡もなく遅いからもうみんな食べちゃったわよ。私は待っていたけれど。」という。
「そうなの?せっかくお寿司食べに行こうとしたのに。じゃあ、お母さん行こうよ」
母を誘って、近くの鮨、長三郎へ。ここは我が家の定番外食のお店だ。
「いらっしゃい! お~、帰ってきた?久しぶりだね。元気にしとったか?」
大将がいつもの笑顔で語りかけてくれる。
「お寿司お寿司って思ってきたんだけど、ここにきたらやっぱりラーメンも食べたくなっちゃった。」と私。
鮨、長三郎は寿司屋だがラーメンや餃子もメニューにある。そして、嬉しいことにラーメンと寿司のセットや、半ラーメンと寿司のセットなどもある。
小さなころから何かあるとここでお寿司とラーメンを食べていたので、ここにくると条件反射でラーメンが食べたくなる。「だからあんたは太るんだ。」と母に言われながらもセットを注文した。


群馬からの長距離ドライブと満腹でお腹がいっぱいになり、実家で休もうかなと思っていたら、実家には小さな甥・姪が来ているから「遊ぼ~、あそぼ~」って言われてゆっくりできないよ。ちょっとドライブでもしない? 私が運転代わるからさ、と母に誘われた。確かにあの子たちは可愛いが家でゆっくりできそうにない。
60を過ぎたが車を毎日運転している母は、私より運転が上手だ。なので母に任せてドライブすることにした。
そしてすぐ「それならお寿司食べながらちょっと飲めばよかった。」と、後悔した。佐渡の酒と寿司って最高なのに。
ちょっと残念そうにしている私に、
「一緒にさ、お寺さん行きたかったんだよね。」と母が言う。
最初に向かったのは清水寺だった。
清水寺(きよみずでら)と書いてせいすいじ、とよむこのお寺。小さいころから不思議な場所だった。ここにくると、なんだか気持ちがすっとして軽やかになる、そんな感じ。
「なんとなく、いい“気”が流れてる気がしない?」と母に言われてはっとした。
子どものころ感じていた不思議な感覚は、“気”というやつだったのかもしれないな、と。
少し急な坂を上り、砂利の駐車場に車を停めると母は途中の参道から階段を昇って行った。私は駐車場の来た道を歩いて下り、参道の初めから神社に向かって歩いてみた。

ひとつひとつの石の階段は大きく、小さなころは何歩かかけて一段を上った。人の通った重みなのか、石は歪んで真っすぐではない。苔は青々しており、雨の日には滑りそうなほど、つややかだ。
石段の両側は大きな杉に囲まれている。ここがとても神秘的で空気も、気も澄んでいるようで、好きなのだ。
階段を一段飛ばしに歩いていくと、途中の道から入った母と並んだ。
東光山と掘られた門の先には、救世殿が見えた。

清水寺
952-0109 新潟県佐渡市新穂大野124-1
0259-22-2167
清水寺の後、もうちょっと行きたいんだけど。
という母に連れられて行ったのが、新潟県で唯一の五重塔がある妙宣寺だった。
ここも、門と五重塔が見える場所が好きだったのだが、境内に入ったのは久しぶりだった。

最近、SNSを始めたのよという母はスマホで一生懸命に写真を撮っていた。「なかなか難しいわね。これ、紅葉も一緒に入らないのかしら?」と言う。「この角度からは難しいから右側に回って、紅葉を手前に入れればちょっと色づいた感じが見えるんじゃないの?」と返事をして私もまじまじ塔を眺めてみる。

相川の宮大工が親子2代で江戸時代に作り上げたと伝わるこの塔は、日光東照宮の五重塔を模して作られているのだとか。離れてみて気づいたのだが、佐渡には文化的な建物や伝統行事がとても多い。


さっきまで、一生懸命写真を撮っていたと思っていた母の姿がない。美しく手入れされた庭を眺めながら、本堂の方まで行っていた。
それから、線香を購入し香炉にお供えしてから「ボケませんように」と煙を必死に両手で集めて頭につけるようなしぐさをしていた。私も重ねて願う。ボケませんように。
妙宣寺
〒952-0303 新潟県佐渡市阿仏坊29
0259-55-2061
さあ、帰るのかしら、と思ったら「もう一か所、お友達がこの前行ってきてとても良かったと言っていたから行きたい場所があるのよね」と、畑野の慶宮寺まで車を走らせた。
ここには、来たことがなかった。
807年開祖の真言宗のお寺で、佐渡に配流された順徳上皇第一皇女慶子宮に縁があることから慶宮寺という名がつけられていて、八祖堂に上る階段の紅葉がとても美しいのだそうだ。父は歴史が好きだったが母は日本史や歴史に興味がなかったはずなのに、いろいろとガイドさんのように教えてくれて、ちょっと驚いた。

なるほど、まだ紅葉には少し早かったが全ての葉が色づいたらどのようにか美しいだろうと思わせる雰囲気の階段だった。陽の光が優しく秋の葉を照らしていた。木漏れ日も秋の穏やかな風と共に心地よかった。
「ほらほら、ここ赤く色づいている。キレイよ~」母が高い所を指す。私はまだ階段の下にいたので赤く色づいた葉を見ることができなかったが、まだまだ元気そうに背筋がピンと伸びた母を見ることができたのは良かった。

〒952-0212 新潟県佐渡市宮川甲457
0259-66-2481
ドライブをして少しのどが渇いたので、帰宅前にカフェへ立ち寄ることにした。とても人気のある小さなカフェのため、お盆にしか帰省しない私はいつも混んでいてここで食べたことがない。地元の友達がよく美味しいよと言っていたのでずっと食べてみたかったのだ。
ここは、農家さんが営業していて、そこで採れた果物…イチゴやネクタリン、ブドウや柿などでスイーツを作っている。

母は、新潟の大きな越後姫という品種のいちごを凍らせて、佐渡牛乳で作った練乳をたっぷりかけた越後姫けずりを注文し、私はおけさ柿のかき氷にした。まあ食べたかった牡蠣が食べられなかったから柿にしたわけじゃないのだけれど、母からも越後姫けずりをちょっともらい、両方食べて目が覚めた。果物は元気をくれる気がする。
フルーツ&カフェ さいとう
〒9520102 新潟県佐渡市新穂青木667-1
0259-67-7088
ここから家はすぐだけれど、母と運転を変わった。
「大学に行くので佐渡出たじゃない。その頃ってあまり気づかなかったけれど、佐渡ってすごいんだね。 農家さんが作った果物を凍らせて削ってかき氷って、当たり前じゃなくて凄いことだよね。 すぐ近くに、こんなに歴史的な建物が点在してることも、考えてみたらなかなかないよね。
お盆に帰ってくるときは、お墓参りして花火をみたり鬼太鼓みたり友達と飲んだりしていたけど、ちょっとは地元もドライブしてみようかなっておでかけしてみようかなって思ったよ。 」
というと、「私もFacebookやって、おともだちからいろいろ佐渡のいいところを聞いてから、出かけるようになったのよ。また帰ってきたら出かけましょうよ。」 と母。
まさか母がSNSで地元のことを知ったり、写真をとって発信しているとは思わず驚いたけれど、とてもいいことだなって思った。 あ、私も友達申請しておこう。離れていても元気かどうか、わかるしね。