「旅、たべよ。」日本海美食旅に誘われ佐渡旅行

南雲純子
南雲純子

妄想旅人、南雲です。妄想?というと不思議に思うかもしれません。旅は誰とどんな想いで行くか?によって旅先や行程、選ぶ店、過ごし方がずいぶんと変わってきます。ニイガタドライブでは、毎月テーマを決め、「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージでドライブをしていく妄想シリーズを展開しております。

それでは、妄想ドライブ旅、スタートです。今回の旅人はこちら。
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旅人:長岡在住。美味しいものとお酒が好きな高校時代の同級生夫婦でふたり暮らし。12月・1月とイベントが続きお互いバラバラな時間の過ごし方になりそうなので、11月に1泊ドライブ旅行に出かけることになった。
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12時頃に新潟港を出て2時間半の船旅で、佐渡についたのは15時過ぎだった。新しく、豪華なときわ丸という船は、展望ラウンジやイベントホールもあり単なる交通手段ではなく「旅」を感じさせるのに十分だった。

平日の仕事の疲れもたまっていたので今回の旅は観光地をガンガン周るというより、目的をしぼってゆっくり出かけることにした。まあ、目的といっても美味しいものを食べたり飲んだり、それだけなのだけれど。

この秋からやたら目にする白いのぼり、日本海美食旅。JRの新潟県への誘客キャンペーンだそうで、とにかく駅周辺では新潟の食のアピールがものすごい。私は日ごろあまり作れない田舎料理が食べたいし、港町出身の彼は美味しい刺身が食べたいという。そんなわがままを叶えてくれるのが佐渡だったのだ。

 

両津港からは晩秋の山を見ながら、そういえば佐渡って朱鷺が生息してるんだよね。会えるかな? という私に、日ごろ旅の下調べなどしない彼が「今年、新しくできたときのテラスというところがあるらしいよ。まだ、本オープンじゃなくて展示物とかはないけれど見学自由で入って見てもいいみたい。」と連れて行ってくれた。それは、野生復帰ステーションの中にあり、大きなガレージというか無機質な建物だったが、周囲の紅葉に溶け込んでいた。

階段を上って屋上に行く間も、手すりの間から垣間見える紅葉が美しく、秋の風は心地よかった。

田園風景の中、白い小さな点を見つけては、「トキかな、ねえねえ、あれ、トキかな。」と聞いてくる。私もよくわからないし、「トキは臆病だからあまり騒いじゃいけないんだって。静かに見守ってね。」と、港でもらった“トキのみかた”というパンフレットを手渡した。

そこには、
「トキに近づかず、やさしく静かに見守りましょう」
「大きな音や光を出さないようにしましょう」
「地域に迷惑をかけないようにしましょう」といったトキを観察する際の注意事項が書かれていた。

は~い、とパンフレットを受け取り、彼は静かに探し始めた。
が、車に眼鏡を置いてきた視力0.4の彼にはトキを見つけることができなかったようだ。

【トキのテラス】
所在地:新潟県佐渡市新穂正明寺1277番地
電話:0259-24-6151(県民生活・環境部 佐渡トキ保護センター)
料金:入場無料(現在屋上テラスのみ仮オープン中)
駐車場:あり(無料)

トキのテラスを離れて、今回の第一目的地美味しい和食のお店に向かう。と、ふと車窓から収穫後の稲が短く切りそろえられた田んぼで餌を探す1羽の朱鷺を見つけた。

「あ、トキいた。」というと、道の端にゆっくりと車を停めてくれた。

さっきまではしゃいでトキを探していた彼は、ドアを勢いよく空けてトキに突進していくかと思っていたけれど、「さっきもらったパンフレットに、車から降りずに観察しましょう。トキに近づかず、優しく静かに見守りましょうとあったから、ここから見守ろう」と言って餌を啄むトキをふたりでしばらく眺めていた。

ひょこひょこ田んぼにくちばしをつつくトキの食事を見ているうちにこちらもお腹がすいてきたので、トキに別れを告げて予約していた和食のお店に向かった。

 

今回の旅行ドライブの目的は食。日本海美食旅(にほんかいガストロノミー)という大義名分のもと、旬の美味しいものを食べまくろうという旅なのだ。

旅館でゆっくり夕食をとるのもよいのだけれど、外食で好きなものを食べて宿で温泉というスタイルが最近お気に入りなのでどこで夕食をとるかがポイントなのだ。いつもはネットで検索するのだけれど、「旅、たべよ」というコピーが目に留まった佐渡のガイドブックに掲載されていた、四季菜割烹 伝で美味しい刺身が食べたいと思い予約したのだ。

トキのテラスから車で15分ほどで四季菜割烹 伝に到着した。予約時間にはちょっと早かったのですぐ近くのAコープを覗いたりしながら時間が来るのを待った。

ふたりとも呑み助な我が家では、外食の時に独自のルールがある。それは運転手が誰になるかを決めるというものだ。そのルールとは、シンプルに、じゃんけん。20歳の成人式の夜から10数年続いているルールなのだ。

「最初はグー、じゃんけん ぽん!」
「やった~っ」・・・喜んだのは、彼の方だった。

まあ、仕方がない。今回の旅は私が明日のそばの会に行きたくて、彼が刺身を食べたかったのだから。と思いつつ、やっぱり悔しい。悔しいのだ。

そうこうしているうちに、17時を迎えたので、開店と同時に暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませ」と元気のよい声の美しい和服の女将が迎えてくれた。
酒が飲める権利を得た彼は、美しい女将を見て更に上機嫌になる。まあ、これもいつものことなので許容範囲だ。

地元のお酒ということで、純米酒 風和を頂く。万葉集に由来する名を持つこのお酒は、令和元号の発表で注目されたという。

「こ、これはやばい」。いつになく速いペースで盃を傾けていく。ちょ、ちょっとどうなのよ。どんな味?
「飲み口がよくて、爽やかなんだけど、旨味がぐ~っと来るんだよね。米の旨味っていうのかな。で、最後ふわっと消える。キレもいいんだ。」
いや、ちょっと待って。飲みたい。

「い、至ありますか?」 風和で上機嫌になった彼は次の銘柄も決めていたらしく続けて注文をしている。至は数年前のお正月に某有名タレントがテレビに秘蔵酒として紹介してから品薄になりずっと飲みたいと思っていたのだとか。

私はノンアルコールビールと共に刺身を頂く。赤メバルのお頭付きだ。佐渡産にこだわった刺身で、この日はヒラメ、ヒラマサ、おきあじ、鯛、石鯛、マハタ、ソーダガツオ、ハガツオが盛られていた。歯ごたえ、甘み、食感。食レポなどできない。とにかく美味しすぎて楽しすぎてひたすら魚たちは胃袋に収められていった。それから、この店の名物でもある焼き鯖寿司も食べた。このお店では兼業で農業もされていてお米は自家栽培なのだとか。素材も良くて腕も良い、そりゃ美味しくないわけがない。

【四季菜割烹 伝】
所在地:新潟県佐渡市畑野126-5
電話:0259-67-7161
営業時間:ランチ(月~金)11時30分~13時、夜(月~土・祝)17時~21時30分
定休日:日曜日(ランチは土曜日休み)

至福のひと時を過ごしたら、今夜の宿がある相川まで30分ほどのドライブ。島の形に沿った街灯りや月あかりに照らされた夜の海岸線は美しく、隣で酔っぱらってご機嫌な彼をのせての運転も楽しかった。

あっという間に宿につき、チェックインを終えて温泉にでも行こうかと思ったが、どうにも「飲みたい欲求」が収まらない。歩いて行けるところに商店街があるというので、夜の町に繰り出すことにした。

 

和紙に絵の描かれた行燈のあるお店に出会った。煙がもくもくと夜空に伸び、香ばしく美味しそうな匂いを漂わせていた。 これはもう、入るしかない。美味しいに違いないという野生の勘が働いた。

暖簾をくぐると、カウンターだけのお店で混みあっていたが、なんとか座ることができた。旅先でこういったお店に出会えるのは楽しくてワクワクする。

ビールや地酒、ワインもある。私はまずビール、彼は先ほどから引き続き、日本酒金鶴を注文した。 あふれんばかりのクリーミーな白い泡。こりゃたまらん。「お疲れ様~」と乾杯して一気に流し込む。 「ぷあ~。旨~い。幸せ」

ひと息ついてから器をよく見ると、金福というお店の名前が彫られたオリジナルのお皿だった。そういえば、彼が日本酒を頼んだ際、籠に盛られたいくつかのお猪口から好きなものを選んだのだが、それも佐渡ならではの金山で金を採掘する際の坑道、無名異坑から採掘した土を使い焼き上げた無名異焼(むみょういやき)という陶芸作品だとか。

【串焼 金福】
所在地:新潟県佐渡市相川二町目9
電話:0259-74-3934(予約はできません)
営業時間:17時~23時
定休日:日曜日

美味しい串焼き数本と3杯のビールで心地よくなり、宿へ戻った。

 

翌日、朝風呂に入ったりしっかりと朝食を食べて1日のスケジュールを確認した。佐渡は案外広いので移動だけでかなりの時間がかかってしまうのだ。
お昼から大崎そばの会。相川から大崎までは、1時間くらいかかるので10時にチェックアウトしてから1か所位立ち寄って、すぐに大崎に向かおう。

「相川で行きたいところがあるんだ」という彼の運転でついたのが総源寺というお寺だった。
青銅が美しい仁王像が階段を上ると左右に立ちはだかる。通常、仁王像は山門に収められているが、屋外でこれだけの存在感を示すものは珍しい。そしてその迫力も金網越しとは異なりストレートに伝わってくる。思わず同じポーズで写真を撮ってしまったが、あまりにも怖い顔過ぎたので誰にも見せられない。

【総源寺】
所在地:新潟県佐渡市相川下山之神町3

お参りを済ませると、心地よい風が通り抜ける場所まで数歩だけ歩いた。眼下には異国の、異時代のコロッセオのような不思議な建物と空間が広がり、その先には海が見えた。
「うわ、これ、何?」 驚いた私に、スマホを駆使しながら「北沢浮遊選鉱場跡という佐渡金山の近代産業遺産なんだって。なんか、カッコイイよね。」と彼が教えてくれた。

世界文化遺産登録を目指す佐渡には様々な史跡や見所が点在しているため、とても1泊2泊ではまわり切れない。 佐渡金山のことがわかるガイダンス施設や、お白洲もある佐渡奉行所、江戸時代の坑道を見学できる史跡佐渡金山などこの相川だけでもしっかり見るには2~3日かかりそうだ。
今回は、食がテーマだったので「もっと見たい!ここに滞在したい!」という興味があふれてこないうちに、相川を離れた。

相川から大崎そばの会がある羽茂(はもち)に向かう途中、スーパーに立ち寄った。
「大崎そばの会は、お茶はあるけどお酒は各自持ち込みなんだって。ビール買っていこう。」と彼が言う。
「じゃあさ、恒例のじゃんけんしよっ。今日は負けないぞ」と私。

「いいよ、今日は俺が運転する。ビール買おうよ」と彼。
私は最初はビール派、彼は最初から日本酒派なのでアルコール持ち込みの場合は何を買うか、が重要なのだ。

「え?ほんと?ありがとう。嬉しい」と喜んでビールをかごに入れる私に、
「代わりと言っちゃなんだけど、これ買っていかない?」風和と至の一升瓶を持ってきた。
「そっか、そういうことか」でも、私も家で飲みたいので買って帰ろう。
500mlを2本、一升瓶を2本抱えた私たちはスーパーをあとにして羽茂大崎に向かった。

 

大崎活性化センターという木製の看板が掲げられた立派な集会所に「歓迎 大崎ソバの会」と迫力のある流れるように美しい文字で大きな紙に書かれた看板が立てかけられていた。 駐車場には、「佐渡が島」を執筆した長塚節の文学碑があった。

玄関のドアを開けると多くの人でにぎわっていた。壁の展示スペースには勇壮な文弥人形が大切に飾られており、その前のロビーでは集落の人たちが農産物や特産品を販売している。長くて立派な自然薯や、丸みを帯びたユーモラスな表情の土人形が並び、小さな市のようだった。

エプロンと三角巾をした笑顔のおばあちゃんに案内され、会場についた。自由席なので真ん中の列で舞台が良く見えそうな前のほうに2人分の空きを見つけ座った。長テーブルが並び、その上にはご馳走が並んでいる。 既に宴は各自で始まっており、テーブルの上には持参した一升瓶やビールの缶が並んでいた。 「これこれ、これなのよ」思わず微笑む私。

すぐにおばあちゃんが蕎麦を運んでくれた。佐渡の蕎麦は長岡の蕎麦とは異なる「ぶっかけ」というタイプらしく少し温かい佐渡特産のトビウオと昆布で丁寧にとった出汁が深みのある皿に盛られた蕎麦に掛かっており、ネギがのっていた。どうやらこの蕎麦は食べ放題で、隣のおじいちゃんは去年7杯も食べたのだと嬉しそうに話していた。

ビールも飲みたい、そばも食べたい、おにぎりも美味しそう、天ぷらや煮物もある。

どれを食べようか迷っていると、隣にいたおじいちゃんが、「この米も野菜もこの土地で採れたもんやし、煮しめ食えっちゃ。そばもお替りしてな。あとからあんこの甘~いのもくるで、それ食べてからまた蕎麦くえばいい。」と教えてくれた。おかあちゃんや地域のおじいちゃんのもてなし、美味しい料理に感激していると演芸タイムになった。

まずは、文弥人形。佐渡で受け継がれている人形芝居で、これには箸をとめて正面を向きなおして見入った。ストーリーもしっかりしている。

おばあちゃんたちの愉快な歌と踊りはとどまることを知らない。いい感じによっぱらってきた私の記憶がふとステージから離れたら、そこにはまわし姿よりさっきよりパワーアップしたおばあちゃんの姿があった。

いやいや、これね、もう本当に最高。
お料理はもちろん、このおばあちゃんたちが田畑で育てた米や蕎麦、野菜で料理をつくって訪れる人にふるまう。その上、楽しく笑ってもらおうと身体をはった芸まで披露してくれる。 想像以上におもしろかった。そして大満足だった。 私はお蕎麦を2杯、彼は4杯、そして去年7杯食べたというおじいちゃんは3杯という記録を残し、「また、来年会いたいね~」といって帰路についた。

【大崎ソバの会2019】
所在地:新潟県佐渡市羽茂大崎1578-1
電話:0259-86-3200(佐渡観光交流機構 南佐渡支部)
料金:大人2500円、小学生1000円、幼児500円
開催日:11月30日(土)、12月1日(日)、12月7日(土)、2月2日(日)
時間:12時~14時30分
*予約が必要です。

ソバの会会場がある羽茂大崎から船に乗る両津までは約1時間。たった1泊だったけれどディープで面白い、そして美味しい日本海美食旅ができたねと笑いながら旅を終えた。また、美味しいものを食べに佐渡に行こう。

南雲純子
南雲純子
新潟県 出身

新潟県生まれ。雑誌・インターネット予約サイトじゃらんにて19年間、旅行・観光の仕事に携わる。『温泉・その土地でとれた旬を食べる・美しいものを見る・人とのふれあい・感動する・ぐっすり眠る・体験する・伝統歴史に触れる・ドライブ・絶景を写真に収める・情報発信』・・・好きなコトを並べてみたら、みんな旅先にあった。

趣味が高じて、温泉入浴指導員・温泉ソムリエ・国内旅行業務取扱管理者・調理師などの資格を取得。

2014年4月~2016年3月まで2年間、佐渡の観光行政に携わったため、実は地元ネタより佐渡に詳しい。佐渡を愛しすぎて今でも月に1回は必ず訪れ、日々ブログ佐渡旅にて情報発信を行う。

地域活性と観光に関わる会社を2016年10月に立ち上げる。今でもひと月の1/3はどこかを旅している。ニイガタドライブの取材を機に、これらは地元中越エリアにももっと出没しようと心に誓う。

【管理HP・情報発信ブログ】
■越後湯沢Active&Relax http://yuzawa.koiwazurai.com/
■湯沢日和  http://blog.goo.ne.jp/from-yuzawa
■佐渡旅 http://sado-tabi.blog.jp/

体験コース

DRIVING COURSE

  • 1日目
  • 2日目
【E8】北陸自動車道 新潟西IC

車で約23分

新潟港万代島フェリーターミナル

船で約2時間30分

佐渡両津港

車で約17分

野生トキ観察・展望施設「トキのテラス」

車で約15分

四季菜割烹伝

車で約26分

金福

車で約3分

総源寺/北沢浮遊選鉱場

車で約46分

大崎そばの会(大崎活性化センター)