妄想旅人、南雲です。妄想というと不思議に思うかもしれません。旅は誰とどんな想いで行くかによって旅先や行程、過ごし方が変わるため、毎月テーマを決め「こんな人がこんな人と一緒にドライブしている」という妄想で物語が進むシリーズを展開しています。
今回の旅人はこちら。
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旅人:長岡在住、28歳(女性)佐渡で研修があるため、車で佐渡入りした。翌日は休みなので佐渡に一泊してのんびりする予定でいる。
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いつも出張はちょっと面倒だけど、今回はちょっと楽しみ。4月に佐渡支店に転勤になったちょっと気になる同期にも会えるから。直行直帰のため、会社に立ち寄る必要がないが、余裕を見て7時半には家を出て佐渡汽船新潟港へ向かう。9時35分発のカーフェリーに乗れば、昼には佐渡につく。出張といえど快適なドライブだ。
(佐渡到着後、4時間の研修を終える)
長い研修だった。そして気になる同期を見つけることができなかった。「疲れた。早く宿に行って温泉に入ろう。」と片付けをしていると、聞きなれた声がした。
「お疲れ!今日ってさ、もう帰る?」 彼だった。
「あれ、いた?ちょっと太ったね? 佐渡美味しいものがいっぱいあるから。」と憎まれ口をたたいてみる。
「ちょっと飯でも行かない?」気になる彼からの誘いに、NOという選択肢はない。取り急ぎ、宿にチェックインして荷物と車を預け、彼の車に乗った。
15分ほど走ったところで白い建物が可愛らしい1軒のレストランの前で車を停めた。
「佐渡にもさ、お洒落な店があるんだよね。」といってドアを開けた。
店内にはカップルや女子会らしく盛り上がっているグループの姿があった。
ミントが香り、りんごやレモンが浮かぶノンアルコールサングリアを頼んだ。 それから、ここはへんじんもっこという本場ドイツのコンクールでも金賞をとった有名なソーセージのお店がやっているレストランなんだってと彼がいい、ソーセージの盛り合わせやサラダ、パスタやピザを注文した。



なるほど、人気のお店らしくどれをとっても美味しい。最後にピスタチオのアイスクリームも平らげた。
「あちこち遊びに行きたいと思いながら、なかなか時間がなくて。」と言いながら、We♡ NIIBO描かれたイルミネーションの先で車を停めた。

佐渡で友達も出来たんだけど、みんな佐渡愛が強くて。NIIBO(新穂)ってこの地名なんだけどさ、何か良いよね。春に集落の祭りもあったんだけど、俺みたいな転勤族にも声かけてくれて嬉しかったなあ。来年、見に来たらいいよ。
「え? 私、誘われてる?」
車に乗り、少し懐かしい歌が2曲ほど流れたところで再び車が停まった。

光の塔やトンネル、サンタクロースや庭木のイルミネーションに訪れた子どもたちが歓喜の声をあげていた。銅像の女性が大きな花を持っていてその花に光が灯る度にカメラマンが下から覗き込むように写真を撮っていた。

この時期、佐渡では至る所でイルミネーションやライトアップが楽しめるのだと彼が言った。と言っても今日初めて見たんだけどね、とはにかんだ顔は私の好きな彼の表情だった。

「もう一か所行きたいんだけど、時間大丈夫?」
「うん、だって今日佐渡に泊まるし。」
「じゃあ、付き合ってもらおうかな」・・・魅惑のキーワードをさらりと言ってくる。 仕事や佐渡のことを話しているうちにあっという間に小木という港町に着いた。
その町の人たちはとても暖かく声をかけてくれ、歓迎してくれた。
金色のイルミネーションがトンネルを作っていた。看板によると、佐渡金山のある相川と小木を結ぶ金の道をイメージしているのだとか。
「茅の輪という行事に使う輪をイメージして、リースみたいにしてみたの。写真を撮っていってね。」 とお母さんに言われたのをいいことに二人で写真を撮ってみようと誘ったが、「三脚ないし、俺、シャッター押すから。」といって私の写真を撮ってくれた。

「うわ、なんか都会の〇〇ツリーに星空が瞬いているみたいに見える。」

「うわ、オレンジの光、コアラがキスしてるように見える。」
ひとりで浮かれていると、彼が近づいてきた。
え。これって告られるやつ?
心の中で準備していると、
「実はさ、支店にすごく可愛らしい子がいて。佐渡の子なんだけど、今度デートに誘ってみようと思うんだ。」と、再びはにかみながら私の好きな顔の彼が言う。
「いいんじゃない? イルミとか、キレイだしすごく楽しかったよ。 誘ってみれば。」
小木から両津の宿まで、1時間ほどのドライブは何を話したかよく覚えていない。 そして、宿で入った温泉は海の近くらしく、ちょっとしょっぱかった。