妄想旅人、南雲です。
妄想?と不思議に思うかもしれません。
旅は誰とどんな想いで行くかによって行程、選ぶ店、過ごし方が変わってきます。
「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージで妄想シリーズを展開しております。
それでは妄想ドライブ旅、スタート。今回の旅人はこちら。
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旅人:南魚沼在住の美咲(31歳)と十日町在住萌(29歳)二人旅。バレーボールクラブで一緒の二人。コロナ禍で練習が中断し、しばらく会っていなかった。萌から久しぶりにLINEが入る。
「明日、空いてませんか?ちょっと付き合ってほしいんですけど。( ;∀;)」
「空いてるよ~練習ないし。どうした?」「ちょっと、話聞いてほしくて。ドライブしません?」
聞けば彼がSNSの炎上に巻き込まれてそれが原因で喧嘩したらしい。そっか、じゃあ出かけよう。美味しものでも食べよう。
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関越道から北陸道へ。三条燕で降りて、吉田駅前のビストロナオミへ。
車に乗ってから食事が運ばれてくるまでの間、萌の嘆きは止まらない。
ところが、だ。前菜のサラダを目にしてから会話がプツリと止まる。

吉田産の野菜がたっぷりのサラダ。

シェフ自慢牛ホホ肉和やらか赤ワイン煮込みビーフシチュー仕立て。
パンをお替りし、あっという間に平らげてしまう。

スイーツ(3点)
ようやく落ち着いたか。と思ったのもつかの間、車の中でまたモヤモヤが再燃。嘆きの時間、ふたたび。
美味しいものを食べる以外、特に予定は決めていなかったものの、前から気になっていたあのお寺が近いと気付いてナビに入れた。

ぽつぽつと小雨降る中、美しい紫陽花が迎えてくれ、少し坂を上ると本堂が見えた。
709年に建立された越後最古の古刹なのだそう。

「ん??んんん?」古刹のイメージとかけ離れた艶めかしい絵が本堂をぐるりと覆うように描かれている。
「美咲さんの趣味ですか?ぷぷぷっ。ここ、イケメン官能絵巻で有名なところですよね」萌が笑う。
「え、そうだったの? 私は日本初のSNS炎上供養のお寺と聞いていたから、連れてきてあげたかったんだけど」


5人のイケメン(上杉謙信・酒吞童子・源義経・武蔵坊弁慶・良寛)がアーティスト木村了子氏の空想の世界で、時代を超えて入浴したり、空を泳いだり、じゃれたり、ちょっとエロティックに表現されている。
お寺もこういう時代になったのねと感心しながら駐車場に戻る。
歩いてすぐのところに新潟の橋50選、千眼堂吊り橋という景勝地があるというので行ってみた。
新緑の中に真っ赤な吊り橋が映える。

橋を渡っていくと、良寛ゆかりの五合庵が佇んでいた。雨に濡れた苔や茅葺屋根の草庵は美しかった。
ここに良寛さまが質素に暮らしていらしたんだな。
と感慨深く思いつつさっきの艶めかしい良寛さまが思い出されあれこれ空想してしまった。

ぐるりと一周できるのだが、もう一度橋を渡りたいと引き返した。
さっきまで降っていた小雨は上がり、雲が勢いよく移動し青空が顔を出した。

橋の中腹で空を見上げていた萌が急にスマホを手に取った。
「あ~、彼からLINE! ごめんね、だって。今日これから会おうって。美咲さん、帰りましょう!」
さっきまで愚痴を言っていた萌は帰宅するまでずっと、車の中で彼の自慢話をしていた。これも、ご利益か。
私にも、何かいいことありますように。