妄想旅人、南雲です。妄想?と不思議に思うかもしれません。旅は誰とどんな想いで行くかによって行程、選ぶ店、過ごし方が変わってきます。「こんな人がこんな人と一緒に、こういった想いでドライブしている」というイメージで妄想シリーズを展開しております。
それでは妄想ドライブ旅、スタート。今回の旅人はこちら。
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旅人:三条在住。親元から看護の専門学校に通う10代女子。関東の美大にいったひとつ上の先輩が、「10月になってようやくそっちに帰れる雰囲気になってきたから大地の芸術祭に行きたいんだけど、土曜日一緒にいかないか。」と連絡をくれた。前の日は嬉しくて、ちょっと緊張して眠れない。遠足前の子どもか、と思うけど。
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三条燕ICインターから1時間ちょっとで大地の芸術祭エリアに到着。先輩の希望で「最後の教室」。私の希望で「絵本と木の実の美術館」に向かうことにする。一番人気の清津峡トンネルは何度も訪れたので今回は別の場所にした。
最初に、絵本と木の実を訪れた。

これ、すっごく可愛いんだけど。
しゃがみ込んで覗いている私に先輩がいった。
「可愛いな(笑)」

お昼は、農舞台の里山食堂で食べた。

何度も見ているけれど、草間彌生さんの作品やカバコフさんの棚田は先輩と一緒に見たかったので周囲を歩いた。新潟を離れ東京で美術を学んでいる先輩の感想が気になった。


入り口にある集落の方言で迎えてくれる作品もなんだか
温かくて、懐かしそうに嬉しそうに歩いていた。
そこから少し車で移動して、先輩が行きたいと言った最後の教室へ。

ずっと気になっていたのに、なんだか行くタイミングがなくて行けなかった場所。
暗い廊下には音楽室やら校長室によくある肖像画が描かれたような額縁があって真っ黒でそれもちょっと不気味だ。
廃校全部が作品ということでメインの体育館だけでなく3階へ上がる。

白い布のドレープが美しいはずが、なんだか棺桶が並んでいるようにも見えて少し怖かった。恐怖を感じるのは私だけなのだろうか。
体育館を戻り、2018年の最新作があるという場所へ。こちらには愉快なゴーストたちが揺れていた。

展示されていた作品紹介にテーマに命があることを知り、少しほっとした。最後の最後が可愛らしいゴーストだったのとあわせて。
「ライトアップがあるみたいで見ていかないか?」と先輩。
照明がつくにはまだ少し時間が早かったので、数か所見て周った。途中、キナーレで温泉にも入った。

十日町でお蕎麦も食べた。先輩と旅行しているみたいな気分だ。
「たくさんの失われた窓のために」という作品は、医療従事者への感謝を込めてブルーでライトアップされていた。さっきの場所では怖く見えた白いドレープが、今度は優しく揺れていた。
暗闇でよろけた私に先輩が手を差し伸べてくれた。
「あ、流れ星。」

帰り道・・・ちょっと大人になった気がして先輩と走る夜のハイウエイにトキめく。
しばらく走って、車が停まった。助手席にいた私の両肩に置いた先輩の大きな手が強く肩をつかんだ。そうして、顔が近づいてきて、私は無意識に瞳を閉じた。
「おい、着いたぞ。」
肩が揺れた。というより、先輩に大きく揺さぶられて、目を見開いた。
「すぐ寝るなよ。高速乗って3秒で寝たぞ。話したかったのに(笑)。ってか、お前すっごいイビキな。疲れてるんだろ。今日はありがと。」
「ええ。夢?っていうか、イビキ?」
「何の夢みてたんだよ。よだれも出てるし(笑)。」
「嘘ッ。もうやだ~。」
「来年の芸術祭、行こうな。」
「はい・・・。」
前日、ちゃんと寝れば良かった。でも、先輩また誘ってくれた。ほんと良かった。来年の芸術祭が今から楽しみだ。